思わず声を出して笑ってしまう。研究者のにぎやかな大冒険の日々(書評)

 ブックバン     7/6(日) 6:00


 

 

『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』から始まった大人気シリーズ第三弾。著者の過ごす日々は、ひたすらに鳥の骨を拾い、ラジオ番組で子どもの質問に答え、学会を開催し……という、いかにも学者らしく見える活動だけで「できている」わけではない。  どんな分野の研究者であれ「研究活動」のなかにはおよそ研究らしくない雑事が詰まっているし、何をするにも我こそは人類の知の最前線を牽引する者なりと思っているわけでもないだろう。そんなのは言うまでもないことだと思う人もいるだろうが、こうしたことを著者が根気よく説いているのは、不要な(有害な)人物または研究だと一般の人に思われて活動しにくくならないようにするためにも、人間の子育ての参考になる話を鳥の子育てから引き出して講演してくれと頼まれないためにも、ぜひとも必要なことなのだ。鳥を人間の道徳に利用しないでほしい。川上先生おつかれさまです。  しかしさすがは川上先生、野暮な議論はせずにただただ笑いをまぶした楽しい活動報告を書いてくれる。六日に一便しかない小笠原諸島行きの船に乗り遅れ(その日は通常便ではなく出港時刻が変わっていた)、途中の寄港地である八丈島まで飛行機に乗って先回りしようとするが、なんと飛行機は八丈島の上空で……という大冒険のてんまつを読んで声を出して笑ってしまったが、もちろん笑い事ではない。調査日程に影響が出るから、即座に関係各所に報告しなければならない事態なのだ。  神経も使い、肉体ももちろん酷使するお仕事、ラクじゃないですね。しかし楽しいからやっていけるのだろう。研究者が楽しいと思ってする研究にこそ、学問の神はほほ笑むに違いない。研究者のひとつの使命は、その分野の(専門家ではない)ファンを作り育てることだと言われるが、著者の功績はまことに大であると言うべきだ。 [レビュアー]渡邊十絲子(詩人) 1964年東京生まれ。早稲田大学文学部文芸科在学中、鈴木志郎康ゼミで詩を書きはじめる。卒業制作の詩集で小野梓記念芸術賞受賞。著書に『Fの残響』『千年の祈り』『真夏、まぼろしの日没』など。本を読み書評を書くこと、スポーツ観戦、公営ギャンブルに人生の時間と情熱をささげる。 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社 

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