選者・書き手の個性が際立つ「未来への入り口」ガイド(書評)
ブックバン 7/29(火) 6:00
人が「本」に求めているものとはいったい何なのだろう? そもそもわたしたちにとって「本」とはどういう存在なのだろう? 九年にわたる連載でたくさんのすばらしい本に出会った。先の問いに対する答えは、その過程の中に折り畳まれていたように思う。 最終回で取り上げるのは『生きるためのブックガイド 未来をつくる64冊』。各分野で活躍する22人の執筆者が、若い世代にとって「未来への入り口」になるよう選んだ小説・物語以外の本のタイトルと、熱のこもった紹介文たち――一九七九年に創刊された岩波ジュニア新書一〇〇〇点目の節目に満を持して企画された一冊だ。 岩波ジュニア新書では、中学・高校の教員や学校図書館の司書を対象としたモニター制度を設けているほか、編集部が各学校を訪問し、生徒たちと一緒に本を読む出張読書会なども継続して行っている。そうした取り組みを通じて見えてきたのは「中高生は小説や物語以外の本をなかなか手に取らない」ということ、そして「生徒たちがいろんな分野のいろんな人の話を聞ける機会が意外と少ない」ということ。本書の企画意図について担当編集者は次のように語る。 「当初はそれぞれ5冊ほど紹介していただくつもりだったんですが、3冊に絞る代わりに自己紹介から入ってもらうエッセイ形式にしました。ただ課題図書のようにタイトルを挙げてもらうよりも、その執筆者がどういう経緯でその本を選んだのか、何を考えて今の仕事をしているのか――つまり、その執筆者が“大人になるまでの過程”を語っていただいたほうが若い世代向けの本のガイドとしてふさわしいと思ったんです」 結果、「執筆者の生き方も浮かびあがる」ユニークなブックガイドとして5月の刊行当初から口コミが広がり、またたくまに重版が決定。文体を敬体に揃えず自由に書いてもらったことも、執筆者の個性を際立てるのに功を奏した。 「“信じられそうな大人”をそれぞれに見つけてもらえたら」(同)。「本」とはただの情報ではない。そこには「他者との出会い」があるのだ。 [レビュアー]倉本さおり(書評家、ライター) 1979年、東京生まれ。毎日新聞文芸時評「私のおすすめ」、小説トリッパー「クロスレビュー」、文藝「はばたけ! くらもと偏愛編集室」、週刊新潮「ベストセラー街道をゆく!」を担当、連載中。ほか『文學界』新人小説月評(2018)、『週刊読書人』文芸時評(2015)など。ラジオ、トークイベントにも多数出演。作品の魅力を歯切れよく伝える書評が支持を得ている。 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社
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