日英伊の共同プロジェクト「次期戦闘機 F3」 開発から“米国が外れた理由”とは? 予算0でも絶えなかった国産戦闘機への情熱(書評)

 ブックバン    7/17(木) 6:00

 

 


 

 戦闘機開発は、国家安全保障上の最重要課題の一である。軍事のみならず、国際情勢、国内政治情勢、経済的利益に翻弄される。本書『次期戦闘機の政治史 選定過程にみる日米欧の攻防』は、日英伊共同開発が決まったF3、日米共同開発となったF2、浮かんでは消えていった米国製F22、大量購入に踏み切った米国製F35導入の経緯を幅広い視点から分かりやすく解説している。 【比較】差がありすぎる…日本・中国・ロシア・アメリカの「第4・5世代戦闘機」保有数をグラフで見る  1980年代のF2導入決定時には、日本はバブルの絶頂期にあり、日米経済摩擦が熾烈を極めていた。同時にソ連のアフガン侵攻以来、デタントが終了して新冷戦に突入し、安全保障環境は厳しさを増していた。米国は、安保面では自分の腰にしがみ付くくせに、経済面では正面から頬を張り倒すようなことをする日本の戦略的方向性を疑っていた。貿易赤字も巨額であった。米国は、F2の共同開発に固執し、その通りになった。

 

 しかし、日本が虎の子の複合材一体成型技術やアクティブ・フェイズド・アレイ・レーダーを差し出したにもかかわらず、米国は最高機密であるフライト・ソースコードを開示しなかった。同盟国でありながら貿易戦争を仕掛けてくる日本を信用しきれなかったのである。  F2共同開発のベースに選ばれたF16は、単発エンジンであり、機体も小さく、改良の余地(拡張性)が少なかったため日本の多くの技術者を落胆させた。それがF3への執念につながっていく。  戦後、根強かった反米平和主義の風潮の中で、日本の防衛技官は終始村八分だった。年間10兆円に及ぶ科学技術予算は一銭も防衛省に流れなかった。しかし、防衛技官は、米英海軍を震撼させたゼロ・ファイターを産んだ技師たちの末裔である。彼らは国産戦闘機への情熱を絶やさなかった。  途中、世界最高峰の米国製F22導入の話が出たが、米国政府自身が、ソ連の脅威が消え、対テロ戦争に集中する中で、高価なF22の大量生産に後ろ向きだった。特にオバマ大統領、ゲーツ国防長官は、日本からの打診をにべもなく断った。当時は未だ米中対立が表面化しておらず、日本へのF22の売却は中国を刺激すると考えていた節がある。  現在、国際環境は劇的に変化した。ロシアのプーチン大統領はウクライナに攻め込み、中国は対米大国間競争に牙をむき、その中露が結託し始めている。日本は対米貿易戦争を止め、最大の対米投資国家に変貌した。台湾有事もリアルである。米国は日本の防衛力の飛躍的向上を望んでいる。この情勢の中、日英伊の共同開発からなるF3が生まれようとしているのである。 [レビュアー]兼原信克(元国家安全保障局次長 笹川平和財団常務理事) かねはら・のぶかつ1959年生まれ。東京大学法学部卒。外務省国際法局長を経て、内閣官房副長官補、国家安全保障局次長を兼務。2019年退官。著書に『日本人のための安全保障入門』等。 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社  

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