佐野寿宏のBOOKブログ!ホームレス同然の生活を送った芥川賞作家「東峰夫」…人々に忘れられるのはつらいか? の問いへの「意外な回答」とは(Bookレビュー)
ブックバン 7/13(月) 6:00
名著には、印象的な一節がある。 そんな一節をテーマにあわせて書評家が紹介する『週刊新潮』の名物連載、「読書会の付箋(ふせん)」。 今回のテーマは「沖縄」です。選ばれた名著は…? *** 約束の場所に自転車でやってきた東峰夫(ひがしみねお)は、インタビュアーの上原隆にまずこういった。「私について書くことを許可します。何でも聞いていいですよ」 東峰夫は作家だが、それで食べているわけではない。 1956年、18歳のとき、「真理とは何か」を探求するために沖縄の高校をやめた。米軍基地などで働いたあと26歳で上京、神田の製本屋に住み込んだ。日曜出勤をせず部屋のこたつに入っていると、社長に「どうした、おきなわくんよ」と声をかけられた。「やるならやってくれ、やらないならやめてくれ」 仕事をやめ、パンの耳が入ったパン屋のバケツを見つけて食いつないだ。 33歳のとき『オキナワの少年』が文學界新人賞、芥川賞をとった。受賞作のつづきを書けと編集者にいわれたが、書きたくない。77年に結婚して沖縄に住み、主夫として子育てをした。84年、46歳で単身再上京、日払いの仕事をしながら書こうとした。 上原隆が尋ねる。「人々が自分の名前を忘れていくのはつらいことですか?」 「ぜんぜん」と東峰夫はこたえる。「自由で、自然で、生きやすいことです」 誠実で警戒されないタイプの書き手・上原隆は1995年から96年にかけ、20余人の中高年「ひとりもの」にインタビューし、さわやかにさびしいこの本『友がみな我よりえらく見える日は』はできた。 東峰夫は健在なら、今年88歳。 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社
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