佐野寿宏のBOOKブログ!とっくり型、円盤型、神殿型…給水塔鑑賞の先駆者によるハンドブック『まちかど給水塔図鑑』を紹介(Bookレビュー)
ブックバン 8/31(月) 6:00
暗渠や坂道、マンホール、信号機、エアコンの室外機、公園遊具、鉄塔など、昨今ますますジャンル的活況を呈している路上観察系の街歩き。その一翼を担う給水塔鑑賞の先駆者によるハンドブック『まちかど給水塔図鑑』(高水湧基・著)が出た。 著者の前作『団地の給水塔大図鑑』も面白かったが、そこから何が変わったかというと、団地以外の給水塔や配水塔、高置水槽までも取り上げている点。おかげで給水塔と配水塔は何が違うのか理解が深まった。私が街を歩くときは正直そこまで区別はせずに見ており、街なかに屹立するオブジェとして、給水塔だろうと配水塔だろうと、アパートなどの屋根の上にある高置水槽含め、どれも惹かれる何かを感じていた。 写真を見ると、とっくり型、円盤型、神殿型、待ち針型など、著者が分類する形の面白さはもちろんのこと、街のなかに突如異質なものがそびえたっている風景の違和感も重要なポイントに思える。 近年は増圧ポンプを利用してタンクを経由せずに給水する方式が普及し、給水塔の数は減る傾向にあるそうだ。その点は残念だし、タンクが存在してもFRP製の四角いパネルタンクだったりすると、形状に面白みがなく、そそられない。やはりどこか異様で、まわりから浮いた姿であってほしい。 本書のなかで膝を打ったのは、著者が給水塔を見に行っているときにふと「給水塔に見られている」と感じる瞬間があると告白していることだ。実は自分も子どもの頃、給水塔が何のためにあるのか知らず、ずっとあれに監視されていると感じて、不気味に思っていた。不気味だからこそ今も気になる存在として、つい見入ってしまうのだろう。 版元の創元社は、このまちかど図鑑のシリーズ化を意図しているようで、すでにガードパイプや送水口の図鑑が出ている。今後街の風景のなかからどんなものが抽出されてくるのか、期待をこめて見守りたい。 [レビュアー]宮田珠己(エッセイスト) 1964年兵庫県生まれ。大阪大学工学部卒業後、会社勤めの傍らアジア各地を旅する。1995年、『旅の理不尽〜アジア悶絶篇』を自費出版してライターデビュー。以来、旅とレジャーを中心に幅広い分野で執筆活動を続けている。『旅の理不尽アジア 悶絶篇』『わたしの旅に何をする。』『ジェットコースターにもほどがある』『なみのひとなみのいとなみ』『だいたい四国八十八ケ所』『日本全国津々うりゃうりゃ 仕事逃亡編』『日本ザンテイ世界遺産に行ってみた。』など著書多数。 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社

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