佐野寿宏のBOOKブログ!服部孝洋『為替介入とは何か 200兆円規模「外為特会」が生まれた謎』を竹下隆一郎さんが読む(Bookレビュー)

 ブックバン      9/2(水) 6:00


 

 

経済ニュースの味が変わる教科書

 出版社に怒られそうだが、『為替介入とは何か』という題名を見て、ワクワクする人は多くないだろう。自分には関係がない、と感じるのが普通だ。  為替介入とは、財務省が「円安や円高が行き過ぎている」と判断したときに、為替市場に介入することを指す。為替レートが動くため、経済ニュースでも大きく取り上げられる。そこまでは多くの人が知っている。そして、何となくの知識でも生活に影響はなさそうに思える。  しかし、本書を読み終えて思ったのは、この本は為替介入についての単純な書物ではないということだ。財務省のヒエラルキーの構造とは。為替介入で得られた外貨資産を管理する外為特会(がいためとつかい)とは、どのような「お財布」なのか。金融とは何か。この本を読めば、全てが分かる。本書は、日本という国家のお金の流れを理解して、ビジネスに不可欠な金融を学ぶための「教科書」でもあるのだ。  私は、料理家・管理栄養士の長谷川あかりさんのレシピ「梅チキンラタトゥイユ」を思い出した。海外の野菜料理であるラタトゥイユに梅干しという組み合わせ。実際に作ってみると、梅干しを使うことで、酸味を味わうことができ、料理全体の輪郭が整えられる。この一品を通して学べるのはラタトゥイユの作り方だけではなく、「味はどう設計されているか」という料理の本質だ。 「梅干し」で料理の見取り図が描かれるように、本書もまた、「為替介入」という一つの視点に立つことで、為替介入、外貨準備、特別会計、官僚の動き方、国際金融の役割が一本の線でつながる。金融の輪郭がハッキリとする。  著者の服部孝洋氏は東京大学で研究を続ける研究者であり、財務省での勤務経験もある。Xやnoteでも情報発信を行う。本書にはその蓄積が注ぎこまれている。  ビジネスパーソンの本棚には、ぜひ本書を。梅干しによって料理が引き締まるように、この本が手元にあるだけで、日々の経済ニュースの味わいがきっと変わる。 竹下隆一郎 たけした・りゅういちろう●TBS CROSS DIG with Bloomberg CCO [レビュアー]竹下隆一郎(TBS CROSS DIG with Bloomberg CCO) たけした・りゅういちろう●TBS CROSS DIG with Bloomberg CCO 協力:集英社 青春と読書 Book Bang編集部 新潮社 

 

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