佐野寿宏のBOOKブログ!樹木希林がお茶の先生を演じた傑作映画『日日是好日』 原作小説の名文を紹介(Bookレビュー)

 ブックバン    9/16(水) 6:00

 


 

 

 名著には、印象的な一節がある。  そんな一節をテーマにあわせて書評家が紹介する『週刊新潮』の名物連載、「読書会の付箋(ふせん)」。    今回のテーマは「師匠」です。選ばれた名著は…?   ***  大学時代から週刊朝日の名物コラム「デキゴトロジー」の執筆者の一人として活躍していた森下典子さん。その体験を書いた『典奴どすえ』をはじめ、エッセイやルポを手がけてきた彼女が『日々是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』を刊行したのは45歳のとき。それまで25年間習っていた茶道についての本である。 〈世の中には、「すぐにわかるもの」と、「すぐにはわからないもの」の二種類がある〉とまえがきにある。その「すぐにはわからないもの」がお茶だという。  習い始めた頃は自分が何をやっているかわからなかった。なぜこうするのか。どんな意味があるのか。師匠の武田先生に聞いても教えてくれない。「とにかくこうするの」「頭で考えないの」。学校ではなぜと疑問を持つことは大事だと教えられてきたのに、と森下さんは戸惑う。だが続けていくうちに季節や自然のとらえ方が変わり、自信のなさやコンプレックスとのつきあい方もわかっていく。  就職に挫折したときも失恋したときも、稽古の日はやってきて、武田先生はそこにいた。「もっと自分の手を信じなさい」「今、目の前にあることをしなさい」「よく見なさい。見て感じるのが勉強よ」――。  やがて彼女は気づく。 〈先生は手順だけ教えて、何も教えない。教えないことで、教えようとしていたのだ。それは、私たちを自由に解き放つことでもあった〉  この作品は2018年に映画化され、樹木希林さんが武田先生を演じた。 [レビュアー]梯久美子(ノンフィクション作家) 1961(昭和36)年熊本県生れ。北海道大学文学部卒業。編集者を経て文筆業に。『散るぞ悲しき』で2006(平成18)年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞、同書は米・英・仏・伊など世界8カ国で翻訳出版されている。2016年に刊行された『狂うひと「死の棘」の妻・島尾ミホ』は翌年、読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞、講談社ノンフィクション賞の3賞を受賞した。他の著書に『世紀のラブレター』『昭和二十年夏、僕は兵士だった』『昭和の遺書――55人の魂の記録』『百年の手紙――日本人が遺したことば』『廃線紀行――もうひとつの鉄道旅』『愛の顛末――純愛とスキャンダルの文学史』『原民喜――死と愛と孤独の肖像』など多数。 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社 

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