佐野寿宏のBOOKブログ!「豊臣兄弟!」より観たい大河ドラマ?江戸の年貢を知り、令和の重税を嗤う(Bookレビュー)

 ブックバン     9/8(火) 6:00

 


 

 

 『年貢』――歴史マニアからは程遠いワタシがこの新書を手に取ったのは、この2文字だけのタイトルの剛力に負けて、というのが正直なところ。が、ページを繰ってみれば、実にあれこれ刺激される一冊でした。  まず考えさせられたのは、五公五民だの六公四民だのと今なお年貢メタファーで語られる、現在ただいまの税のこと。社会保障費を加えた国民負担の重さ&増え方と、見返りで得られる“国民受益”のショボさ&減り方は皆様よくご存知のとおりですが、これはどうやら美しく強きニッポンの伝統らしい。江戸時代の幕府や藩でも年貢(プラス上納金類)の大半は支配階級の武家のために使われ、納税者たる民百姓向けの支出はえらく少なかったんだそうな。  が、そういう呆れや怒りとはまったく別に、史実のあれこれに触れて脳内に次々と湧いて出たのは、映画にでもしたら当たりそうな時代劇の筋書き。「武士の家計簿」から「超高速! 参勤交代」「殿、利息でござる!」「大名倒産」あたりへと続く経済系マゲモノ喜劇、ああいう物語のネタの宝庫なのよ、『年貢』。  たとえば、納付の手段がコメからカネに移ったり、納めどきが年1回から分割に変わったり、武家に“お手当”を渡す代わりに百姓から年貢を受け取る庄屋や商人が現れたり。そういう転変の挙句、領主の出費を逐一チェックし、見合った額だけを渡す領民まで出てきて……なんてもう、見事な笑劇じゃないですか。  あるいは、出羽の村々から海路で年貢米を運ぶために江戸に上った名主たちが廻米問屋と運賃で揉め、団結して幕府に掛けあったり、幕府の内部でも中央官庁たる勘定奉行所側と地方の出先たる代官所側に分かれてそれぞれを応援したり。そういうドタバタだって時代劇で観てみたい。 「豊臣兄弟!」が史実無縁と悪評紛々の大河ドラマ、新作はこの真摯な史書を原作に税の悲しさを嗤う大作、「年貢?」でどうでしょ? !  [レビュアー]林操(コラムニスト) 1999〜2009年に「新潮45」で、2000年から「週刊新潮」で、テレビ評「見ずにすませるワイドショー」を連載。テレビの凋落や芸能界の実態についての認知度上昇により使命は果たしたとしてセミリタイア中。 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社

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